東京高等裁判所 昭和35年(ラ)962号 決定
抗告人は第一審川崎簡易裁判所に対し本件建物収去命令申請事件が同裁判所の管轄に属しないことを理由にこれを管轄権ある横浜地方裁判所に移送の申立をなしたところ第一審裁判所はこれを却下したので抗告人より原審に即時抗告を申立てたが原審が所論の如き理由でこれを却下したことは記録上明らかである。民事訴訟法第三十一条の二は簡易裁判所はその管轄に属する事件についても裁量によりこれをその所在地を管轄する地方裁判所に移送できることを規定したもので本件の如く管轄違いを理由とする移送の場合を規定したものでないことはいうまでもない。そして同法第三十条によれば裁判所は訴訟がその管轄に属しないと認めるときは決定を以てこれを管轄裁判所に移送すべきであつて、この移送決定は裁判所の職権を以てなすべく当事者に右移送の申立権は認められていないものと解するのが相当である。右と異る抗告人の主張は採用できない。そうすれば抗告人が第一審川崎簡易裁判所に前記移送の申立をなしたとしてもそれは単に同裁判所の職権の発動を促す意味を有するに過ぎず、同裁判所が右申立を却下したとしてもこれに対しては不服の申立をなし得ないと解するを相当とする。民事訴訟法第三十三条は当事者に移送の申立権が認められている場合(例えば同法第三十一条、第三十一条の二の場合等)にその申立を却下した裁判に対し即時抗告ができることを定めたもので本件の如く当事者に移送申立権のない場合は同条に該当しないと解すべきである。
(奥田 岸上 下関)